被写体の声を聞く

Text by 中野誠志

フォトエッセイ ワンポイントアドバイス タツノオトシゴ

Text by 中野誠志

 

水中写真を初めてすぐの頃は、カメラをハウジングに入れて、そのままの状態で撮影されている方が多いかと思います。

 

その状態ではなかなか小さな生きものたちを撮影するのは難しいですよね。

近づいて大きく撮影したいけれど、近づきすぎるとピントが合わない。

 

でも中にはスーパーマクロモードなどの機能が付いているカメラもありまして、そうしたカメラでは最短1cmまで寄ることが出来たりします。その結果、大きく撮影することが出来ます。

また、ハウジングにクローズアップレンズを取り付けることで、近づいて大きく撮影できるようにもなります。

 

 

ところが、そうしたスーパーマクロモードや、顕微鏡モード、クローズアップレンズなどの機能は、主に動かない花や静物向けの機能ですので、ウミウシなど動かない生き物以外ではなかなかうまく撮影するのが難しいです。

 

動く生き物の場合、まず近づきすぎると「危険だ!」ということで逃げます。

また、近づきすぎると、被写体に影を作らずに光をきれいに回すという別の難しい問題も出てきます。

 

 

それで、少し離れた位置から写しつつ、被写体を大きく撮影するためのデジタル一眼レフやミラーレス一眼レフでのマクロレンズ撮影が人気となるのですが、そうした方で多いのが被写体とのコミュニケーションの不足です。

 

どういうことかと言いますと、被写体めがけて突撃してしまい、その結果「危険だ!」ということですっかり被写体が萎縮してしまうのです。

 

 

タツノオトシゴなどを撮った写真の被写体がいつもうつむいたり、壁に埋まってしまっている方は、ぜひ1m以上離れて最初のアプローチを開始して下さい。

 

ファインダー越しに彼らの目を見ていると、こちらに怯えているのか、こちらを受けて入れてくれているのか、いろんな声が聞こえてくるかと思います。

 

 

<撮影データ>

SONY NEX-5 ノーティカムハウジング

30ミリマクロレンズ f4.5 1/160秒 Iso200 天草にて撮影