Text by 中野誠志
絞りを絞って撮影すると、被写界深度が深いシャープな写真となります。
解放絞りのマクロ写真と対極にあるのが、このシャープに絞り込んだ水中マクロ写真です。
表現的には「カリカリに絞った」または単に「カリカリ」と呼ばれたりします。
絞りを絞り込んで深い被写界深度を得ることで、生物の細部までしっかりと描写することができ、絞ることでレンズの中心のスイートスポットを使用するので、収差などの影響も少なく、自然光も排除されるのでコントラストの利いた美しい写真となります。
(※絞りすぎによる回折現象に注意が必要です)
焦点距離は短めの中望遠マクロレンズがカリカリ表現には向いており、APS-Cサイズのカメラは60mmマクロ、フルサイズカメラはニコンの60mmマクロやシグマ70mmマクロ~100mmマクロぐらいがベストかと思います。
こうした絞った表現というのは、卵を保護する魚や、エビカニ系や透明なクラゲ類などと、黒バックでシャープに表現すると相性が良く、「決まった!」感(笑)があります。
<撮影方法>
回折現象に注意しながら絞りをf11~16程度以上絞り込み、シャッタースピードをX接点に設定し、Iso感度は100~200ぐらいの低感度に設定してストロボを強い光量で発光させます。
絞った場合の被写界深度ですが、キヤノン100ミリマクロレンズで最短撮影距離30cm、f16での撮影の場合被写界深度は8.64ミリです。
一方で、撮影距離50cmの場合の被写界深度は24ミリまで広がります。
ニコン60ミリマクロレンズの場合は最短撮影距離が18.5cmですので、被写界深度は9.13ミリとなります。
同様に50cmの撮影距離の場合は、約67ミリまで広がります。
被写界深度は撮影距離で大きく違ってきますので、口内保育などの生態を見せたい被写体やエビカニ系などの被写体について、ピントを細部まで深くかけたかったら少し被写体から離れて撮影するようにすると良いでしょう。
なお、広角マクロレンズのシグマ24ミリの場合は、最短撮影距離18cmでf16での撮影の場合、被写界深度55.24ミリです。
Text by 中野誠志
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