Text by 中野誠志
図鑑写真というと、少し写真が撮れるようになった頃、「これは図鑑写真だからダメだ」というように、水中写真では蔑視、または揶揄される傾向があります。
どういう意味なのかわかりやすく言うと、「図鑑写真であって作品ではないからダメだ」という意味なのです。
しかしこれは間違った風潮で、西表の矢野さんが出版された名著『日本のハゼ―決定版』や、日本のベラ撮影の第一人者西山一彦さんが出版された『日本のベラ大図鑑』のように、図鑑写真も極めれば素晴らしい作品となるのは間違いありません。
その生物が一番美しく光り輝く瞬間に、一番美しい状態で撮影してあげることで生物本来の生と美を閉じ込めた作品とすることができます。
それに、きちんとした図鑑写真を撮影するのは決して簡単なことでは無く、むしろ下記のような内容にこだわって図鑑写真を撮ることは難しくさえあります。
やり甲斐もあり、水中写真の上達にもつながりますので、ぜひしっかり取り組んでみて下さい。
カメラのフォーマットやレンズの焦点距離にもよりますが、マイクロフォーサーズでf8程度以上、APS-Cやフルサイズでf11以上ぐらいあれば良いでしょう。
被写体とカメラが水平になるように心がけると、ピントがきれいにかかりシャープな図鑑写真が得られます。
3:トリミングの自由を残すために、フレーム左右ギリギリいっぱいで撮影しない
4:基本的にきれいに全身をフレームに収める。
近づきすぎてフレームから尾びれなどがはみ出さないように
5:基本的には左向きだが、厳密では無い(Photoshopで左右に反転も可能)
6:撮影に当たって、ヒレや体にケガや欠損が無いきれいな個体を選ぶ
魚によってはヒレの開閉が自在な魚もいます。
なるべくヒレが開いている時を撮影すれば、細部までどのような作りになっているのか観察しやすいです。
繁殖期で婚姻色が出たオスの個体や、夜間色などバリエーションを押さえていくのも楽しい。
図鑑写真として、写真から伝えることができる情報はなるべく多い方が良いです。
夜間撮影では黒バックになるのは仕方ないが、昼間の撮影なら背景もその水深に合わせたちょうど良い明るさになるように撮ると良い図鑑写真になります。
コツはIso感度をうまく活用することで、暗い天気や深い水深によっては、ぶれが生じるスローシャッターや、ピントが浅くなる絞り開放で水の色を明るくする方法を選ぶのでは無く、Iso感度を上げることで調整する場合が良いです。
暗い天候や深い水中の事は、一般的な海中というよりも、光が届きにくい屋内での撮影をイメージすると 、なぜIso感度の操作が必要かわかりやすいかと思います。
Text by 中野誠志
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