Text by 中野誠志
ここでは水中写真の効率的な上達方法について解説します。
10年ほど前の水中写真の世界に比べて、現在の写真の世界は劇的に、そして加速度的にレベルが上がっています。
これはひとえに、デジタルカメラがもたらしたトライ&エラーの学習の効率化と、インターネットの普及に伴う良い見本写真の共有化によるものだと思います。
<潜りに行くときは予習・復習をしよう>
皆さんは今まで学校の勉強はどうされてましたか?
授業の後には復習用の宿題が出たり、授業の前には予習課題が出たりしてましたよね?
私は学校の勉強が大嫌いだったので、さっぱり予習復習もせず、授業中も先生の話を聞いてませんでした。
おかげで学校の成績はさっぱりでした。
でも、水中写真の勉強については予習復習は欠かさずやりますし、大好きです。
ネットで情報収集もしますし、これは!と思った写真家の写真集は陸上の風景写真や昆虫写真など異分野の写真でも勉強します。
皆さんもぜひカメラを持って潜りに行く予定が決まったら、自分が撮りたい、その海で見られる生き物や風景の良い見本写真を見ておいてください。
その写真を目標に、現地の海で水中写真を撮影します。
<学ぶ姿勢をもとう>
水中写真の上達を目指す人は、もし上級者やプロと一緒に潜れる機会があれば、自分の撮影の時間を割いてでも、上級者のダイビングや撮影方法が自分とどこが違うのか、観察・分析してみましょう。
お客さんたちを見ていると、どうしてもなかなか自分の写真撮影だけに夢中になっていて、周りのダイバーには目もくれない人がほとんどです。
逆に言うと、周りのダイバーの良いところを学ぼうと、学びの姿勢を持っているダイバーは少数派ということですので、そうした姿勢でいつも潜るようになれば、人よりリードした水中写真の上手なダイバーになるのは約束されたようなもの、ということになります。
<思い描くこと・ビジュアライゼーション>
水中ではプレビューを活用しましょう。
撮影した写真はその場で確認してみましょう。
予習してきた自分が撮りたい写真のように撮れたでしょうか?
もしイメージしてきた写真のように撮れてないなら、いったい何が違うのか考えて、その場で修正してまた撮影してみましょう。
理由がわからなければ、海から上がってガイドさんや一緒に潜った写真が上手い人に相談することもできます。
撮影機材が大きく違うなら仕方ないのですが、同じ道具で撮影しているのであれば、撮り直すたびに良い写真へとブラッシュアップされていくはずです。
<潜り終わったらパソコンで確認してみよう>
潜った後は、パソコンで写真をチェックしてみましょう。
潜水中に失敗した写真を消去している人が居ますが、失敗した写真を消去するのはカメラでやらずにパソコンでやるのを私はお勧めしています。
なるべくならその日のうちに、どうして失敗したのか、理想の写真のように撮るにはどうすれば良かったかを考えるようにすると、上達スピードが早くなります。
<上級者に写真を定期的に見てもらおう>
上達するのに一番有効なのは、良い写真を撮る上級者に自分の写真を見てもらい、直接アドバイスをもらうことです。
「この人のような写真が撮りたい」
という人に見てもらうのが、その人のような写真を撮れるようになる一番の近道というわけです。
<水中写真を定期的に発表しよう>
インターネットの普及のおかげで、雑誌やフォトコンテスト、写真展以外でも、ブログやSNSなどいろいろなメディアでの写真発表の機会があります。
撮った写真はみんなに見てもらいましょう。
コメントや反応がもらえれば、それが次回の水中写真へのやりがいにもつながります。
<陸上で練習しよう>
私のお店にも、なかなか休みの都合の関係で、たまの休みは全部ダイビングで水中写真!という方が多数いらっしゃいます。
もちろんそうしていただけると、うちのお店もありがたい(笑)のですが、特に水中写真の初心者のうちはぜひ陸上でも写真の練習をしてみて下さい。
カメラの機能が良くわかっていない状態で、しかもカメラに慣れていないと、ちょっとした設定の変更を加えるだけでもの凄い時間がかかってしまいます。
もしこれが水中で起こってしまったとしたら・・・
ほとんど写真を撮れずに終わってしまいますよね。
例えばダイビングに出かけて、日帰りだとだいたい2ダイブですよね?
水中で泳いでいる時間を引いたら、1本のダイビングで写真を撮っている時間は30分ほどでしょうか?もっと少ないという方も多いかと思います。
ですので、その貴重な潜水時間で充実した撮影をするためにも、せめて自分のカメラに慣れる程度には陸上でいろいろ写真を撮って遊んでみて下さい。
陸上でのマクロ写真の練習には花や昆虫を撮影したり、ワイド写真の練習には風景を撮影したりするのをお勧めします。
私も初心者の頃、潜らない日はあちこち出かけて風景撮影を楽しみながら練習しました。今でも仕事でブツ撮りをしたり、結婚式の撮影をしたりといろいろな経験を水中撮影に役立てています。
<良い写真をたくさん見よう>
水中写真の上達において、良い写真をたくさん見て、どういった写真が良い写真なのかの基準を作ることが大事です。
見本を元に練習するのはどんな勉強でもスポーツでも同様ですし、人の写真を見ることで新しいインスピレーションが生まれたりもします。
Text by 中野誠志
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撮影に当たっての心構えやヒントはこちら。
より詳細なテクニックや理論などは、こちらの水中撮影テクニックをどうぞ。