Text by 中野誠志
こちらは水中撮影における基本用語集のページです。
水中写真の世界では陸上写真の世界にプラスして、専門的な概念や要素が入ってきます。ここではそうした内容をまとめています。
手早く目的の情報をお求めの場合、ホームページ内検索をご利用下さい。
【さ】
<最短撮影距離>
被写体からセンサー面までの距離。
接写撮影において重要な要素となってくる。
例えばNikon 単焦点マイクロレンズ Ai AF fisheye Nikkor 16mm f/2.8Dの最短撮影距離25cmと、SIGMA 単焦点魚眼レンズ 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYEの最短撮影距離15cmでは、撮影できる表現が大きく異なる。
詳細はワイド撮影の項目をどうぞ。
<撮影倍率>
例えばCanon 単焦点マクロレンズ EF100mm F2.8L マクロ IS USMのようなレンズに記載のある「1:1」などの表現のこと。
1:1であればフルサイズセンサーの場合、1cmの大きさのものを最短撮影距離で撮ると、センサー上で1cmの画像として記録される。
<撮影モード>
A、S、TV、P、M、などモードダイヤルを使って選択する撮影モードや、
水中ワイドモード、水中マクロモードなどがある機種もある。
上級者はMのマニュアルモードと、Aの絞り優先オートを状況により使い分けて撮影する。
【し】
<自然光(環境光・周辺光)>
ストロボなどを使わずに利用できる、太陽など由来の光のこと。
水中写真では、ワイド撮影で海を青く撮影したり、マクロ撮影で背景を青抜きしたりするのに利用する。
<絞り>
f値で表されるレンズ開口部の数値。
被写界深度と写真の明るさに影響する、写真を構成する上で重要な要素。
・絞りを開放しているとレンズ周辺までを使用して撮影するので、ボケは丸くなり、周辺光量落ちが増える
・絞りを絞り込んでいると、レンズ中央を使用して撮影するので、被写界深度は深くなり、ピントが合う幅が増えて被写体はシャープに写る。
<絞り優先オート(Aオート)>
Aは絞りの英語Apertureのこと。
撮影者が決定した任意の絞り値に合わせて、カメラがシャッタースピードを自動で設定する。
写真表現においては撮影者の意図を反映した被写界深度は重要な要素となる。広角撮影においては、ポートの収差の影響の緩和と、パンフォーカス表現が好まれるので絞り優先オートがよく使われる。
<収差>
色収差以外のものはザイデルの5収差と呼ばれる。
被写体を結像する際ににじんだりボケたりする現象のこと。
絞ったら改善するものと、絞っても改善しないものがある。
レンズ単体では目立たなくとも、ポート(特にドームポート)に入れると非点収差やコマ収差が目立つ場合があり、レンズとポートとのマッチングが重要。
<周辺光量落ち>
絞りを開放していると顕著に起きる、写真周辺での光量の低下の現象のこと。
絞りを多少絞るか、Raw現像ソフトでレンズ補正することで改善する。
<焦点距離>
レンズ(光学系)の第2主点から焦点(撮像素子センサー)までの距離が焦点距離である。被写体からカメラまでの最短撮影距離とは別ものである。
一般的に広角レンズほど焦点距離が短く、望遠レンズほど長くなる。
例えば60ミリマクロは光学系の主点からセンサーまでの距離60ミリということで、600ミリの超望遠レンズは60cmということ。
【す】
<ズームレンズ>
一般的に単焦点レンズよりも画質は落ちます。ある程度高価なズームレンズよりも安価な単焦点レンズの方が良い描写をすることもあります。
陸上では地形の影響で便利なズームレンズですが、水中では上下にも三次元的な動きが可能となりますので、あまり出番はありません。
望遠の便利ズームレンズは、レンズの繰り出しが長くてズームギアやポートに収まらなかったり、被写体までの距離を離さなければならなかったりと、水中では使いにくいです。
ズームレンズの出番としては、フィッシュアイレンズでは近づくことができない魚などをCanon EF16-35mm F4L IS USMや、Nikon Ai AF-S Zoom Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-EDなどの広角ズームレンズで狙います。
<スネルの窓>
水面で光が屈折し、丸い円形を描くこと。
円形の内部は水上が見え、円形の外部は全反射となります。
<スヌート撮影(スポットライト撮影)>
明暗を強調し、被写体へ視点を注目させる写真または写真技法です。
ストロボや水中ライトなどの光を道具などによって狭め、
局所的に被写体に当てることで作られます。
詳細は水中撮影テクニックの項目のスヌート撮影を御覧下さい。
<スローシャッター>
任意にシャッタースピードを遅くすることにより、被写体単体や、画像全体にぶれの効果を与えることが出来る撮影方法。
流し撮りや追い撮り、ぐるぐるや水中ライトとストロボの組み合わせなど、いろいろな表現方法がある。
詳細は水中撮影テクニックの項目のスローシャッターのページを御覧下さい。
撮影に当たっての心構えやヒントはこちら。
より詳細なテクニックや理論などは、こちらの水中撮影テクニックをどうぞ。
Text by 中野誠志